~立科町のリンゴに惚れた男~ 移住、研修、収穫までのドキュメント vol.2
みなさんこんにちは!
この連載では、立科町に移住しリンゴ畑を借りた地域おこし協力隊の1年間をリアルタイムで発信していきます。vol.1はこちら。
剪定作業
一体、何本の枝をきったんやろうか…
剪定作業?いや、これは伐採作業やな…
初期費用が避けられない道具も付いている好条件だったとはいえ、万事がうまくいくわけでありません。二つ返事で借りたリンゴ畑、実は腐乱病というやっかいな病気が待ち受けていました。果樹栽培にはつきものですが、「特効薬を作ったらノーベル賞ものだよ」なんていわれるほど、リンゴ農家の先輩方も悩まされている病気なのです。
元の農園主さんはご高齢で、おそらく手入れにも苦労されていたのでしょう。病気も多く、枝も暴れ放題。一計を案じて、研修先のリンゴ農家の方に相談して活かせる木を選別してもらいました。
枝ならまだしも、木まるごとダメなものも少なくありません。元農園主さんの気持ちも理解できますが、それでも「この腐乱病を放置したら、元気な木も病気になってしまうんや」と心を鬼にして、切り落としていく決意を固めました。
農機具の多くは引き継げたものの、この状況ではチェーンソーも入手する必要があります。数万円の出費は痛いですが、なければ作業は進みません。
3月に入ると選定作業をスタート。感情を捨て、美味しいリンゴがなることだけを想像しながら、病気の木肌を削り、枝を落とし、木を切り倒していきます。
うっそうとしていた畑は、目に見えて陽の当たる農地に姿を変えていきました。病気を切除すればいいわけではありません。切り口には薬剤を塗布して病気が広がらないようにしなければなりません。さながら、外科医のような気分です。
尋常ではない量の切り落とした枝は、まるで山のよう。でも実はこれ、今どきの言い方ならSDGsでもあります。
畑を紹介してくれた方は宿泊施設を経営していますが、リンゴの木は薪ストーブに使えるというのです。しかも、かなり上等な薪として。細い枝はせいぜい着火剤にしかなりませんが、何しろ畑の4分の1ほども“伐採”していますから、太い木は薪に最適です。他にも「薪が欲しい」という方も取りにきていただいたので、助かりました。
とはいえ、剪定、伐採した木は軽トラで畑から運び出して燃やさなければなりません。何しろ、病気だった木ですから畑に残すわけにはいかないのです。切っては積み、降ろしては燃やし…。50歳も半ばを過ぎた体には厳しい作業で筋肉痛の日々でも休んでいる暇はありません。
4月1日には雪が降った立科町ですが、その後は初夏を思わせる日が続いていたのです。そうです、剪定を急がないと…。
「花が咲いてまう!」
つづく