~立科町のリンゴに惚れた男~ 移住、研修、収穫までのドキュメント vol.1
みなさんこんにちは!
この連載では、立科町に移住しリンゴ畑を借りた地域おこし協力隊の1年間をリアルタイムで発信していきます。
自己紹介
芳野 昇 55歳
大阪府出身、2021年3月まで35年間、大阪市役所で消費者行政や広聴相談業務、港湾管理、児童相談所などさまざまな業務を歴任。
都会で暮らしてきたが、いつかは自然が豊かな町で暮らしたいと考え、ふと訪れた立科町でリンゴの木の力強さ、おいしさに魅了され、どうしてもこの地でリンゴ栽培に携わりたいと立科町への移住を決意した。
令和3年度地域おこし協力隊に応募、21年5月より農業振興担当として立科町に移住しリンゴ農家として独り立ちを目指す。
研修の日々
5月に地域おこし協力隊として着任、まずはどこでリンゴの栽培を学ぶべきか。立科町役場に相談し、この町では最大規模の「十八塚リンゴ生産共同組合」を紹介していただき、研修が始まりました。
「リンゴ農家になりたい…」と思っても、農業経験などありません。まずは見様見真似での作業から始まりました。
実は昨年4月、立科町だけでなく広範囲に霜の被害があったらしいのです。リンゴの花がついた後での霜は、想像以上の被害でした。
美味しいリンゴのためには、咲いた花と実を選んでいかなければなりません。それが「摘花」や「摘果」という作業。ところが、どの程度まで受粉するかわからないので、通常より多めに花を残し、見極めて摘果しなければなりません。1年目の農家見習いには“異常事態”からのスタートでした。
それでも何とか格好がつき、収穫の秋には9月の「つがる」「シナノドルチェ」「紅玉」に始まり、10月は「シナノスイート」「秋映」「王林」「シナノゴールド」「名月」、そして11月には立科町の主力といえる「ふじ」を収穫しました。
先程のとおり、2021年は凍霜害の影響を避けられませんでした。収穫量は例年の3割減、通常よりサイズの小さい「小玉」が多く、表面もざらついた「サビ」といわれる状態が少なくありません。それでも…たっぷり愛情を注いだリンゴは、甘く、歯ごたえもパリッとして、蜜たっぷりの「おいしい」リンゴを収穫できたことに感動を覚えました。
リンゴ農園との出会い
今年も研修は続きますが、農家にとって出会いは何より重要です。
昨年末、この町に来て知り合った方からこれ以上ないお話をいただきました。
「収穫直前に亡くなった農園主さんがいるんだけど、息子さんは別の仕事をしているので、畑を継いでもらえないだろうか?」
作業に欠かせない高所作業車2台、収穫には必須の運搬車、薬剤散布用の道具一式、乗用草刈り機…。どうしても初期投資が必要な道具つき。このチャンスを逃す手はありません。もちろん、リンゴの木は1年放置したら復活させるまでに3、4年、下手をするとダメになってしまうというのです。この好機を逃せば、次に農園を任せてもらえる保証などありません。二つ返事でお受けしました。
約200本のリンゴの木。ふじをはじめ、シナノスイート、名月など様々な品種もあるようです。
「よし、この1年間の研修の成果を発揮しよう!」
年が明け、まずは剪定が最初の作業です。4月中旬には花を咲かせなければなりません。しかし、そこに待ち受けていたのは、新人リンゴ農家には想像以上に厳しい現実でした…。
つづく