~立科町のリンゴに惚れた男~ 移住、研修、収穫までのドキュメント vol.11
みなさんこんにちは!
この連載では、立科町に移住しリンゴ畑を借りた
地域おこし協力隊の1年間をリアルタイムで発信していきます。vol.10はこちら
作るより難しいこと
11月に入り、いよいよフジの収穫が本格化しています。
約200本の木のうち9割を占めていますから、まさにここからが正念場。リンゴを作っても、お客様に食べてもらわないことには農家とはいえません。今年は農協に加盟できていないので、販売先はもっぱら町の直売所。採っては出し、出しては採るの繰り返しという日々が続きます。
春の剪定から始まり、摘花、摘果を経て夏が過ぎ、実が大きくなっていく様子に一喜一憂し、葉摘みを終えようやく迎えた秋の収穫に感動し…なんて悠長なことを言っている暇はありません!
昨年は一連の作業こそ研修させてもらいましたが、リンゴを売るのはまさしく初めて。一体、何から手をつけていいのやら。
販売の方法にもいろいろあり、数個を袋詰めにするほか、箱売りもあります。大阪では考えられなかったのですが、長野の方は1つの家庭で10キロの箱を数個買っていくなど当たり前。それほど、冬の生活に根付いているのだと思い知りました。
これだけ愛されているリンゴですから、「ぜひ自分のリンゴも食べてほしい」と気合も入りますが、農家1年生を最も悩ませるのが、値段の設定でした。
おおよその相場感はあるものの、「これなら売れる」という決定材料がありません。恥ずかしながら、他の農家さんの値段をちょっと拝見して、自分なりに決めるしかありません。箱売りにも2キロ、3キロ、5キロ、10キロとあり、最も利益率の高い「贈答用」から、箱の上を開けて中身をみせる「自家用」まであって、どうしていいやら頭が混乱しそうです。
改めて痛感する「ほしいもの」
リンゴは詰める前にも「選果」という大事な仕事があります。畑で出荷できない実を選別しますが、次はそれを持ち帰って大きさを揃えないといけません。発注を受けた箱詰め作業をしていると、どうしても「あと1個足らん~」と悶絶することもしばしば。
当初は部屋に持ち帰って選果作業をしていましたが、あっという間に部屋はリンゴでいっぱい。おまけに段ボールの組み立て、袋詰めの作業は腰が痛くて、痛くて…。
どうにか、作業する場所を借りられたのですが、これも一時的なものでしかありません。先日、先輩のリンゴ農家との座談会に参加しましたが、仰っていた「大事なのは家」というのが実感をもって理解できました。
住むところというより、電気がついて体に負担のない姿勢で選果できて、ある程度ストックできる場所。協力隊のうちに、倉庫のある家を探すのは必須項目になりました。
畑の難敵
一年の総決算ですから、収穫は楽しい作業です。私の畑では最終的に40本の木をオーナー制で買っていただいたので、お客様が収穫にいらっしゃいます。皆さん、脚立に乗ったり、もいですぐのリンゴにかぶりついたりと、非日常を楽しんでいただいています。もちろん、目の前で「美味しい!」と言っていただけるのは、何より生産者にとってうれしいことです。
さて、赤く色づいたリンゴは実に美味しそうに見えます。これ、人間だけではないようです。 写真を見ていただくと分かりますが、何者かが大事なリンゴを食べている! 特に木の上の方、「これはいい実や」と自画自賛したくなる大きく赤い実を取ってみると、穴が開いているのです。「チクショー、やられた」。犯人は分かっています。そう、ハチと鳥です。ハチは1つのリンゴをたっぷり、ゆっくり食べるのが特徴。ときどき収穫しながらお食事中のハチと目が合うこともあります。スズメバチなど大きなハチは恐怖もありますが、仲間のハチには受粉をしてもらっているので、見逃すことにします。 一方、ちょっと許しがたいのは鳥です。ムクドリやカラスだと思われますが、チョンと一突きしただけで次の実に渡り歩くのです。「食うなら、しっかり食わんかい!」と愚痴もこぼれます。とはいえ、鳥も自然の中でエサを探して生きなければなりません。食害という言葉もありますが、「モニターとして美味しさのチェックをしてくれてるんやな」と考えています。
いよいよリンゴの作業も仕上げ段階。まだまだやることはありますが、12月にはあることにチャレンジする予定ですので、次回に報告したいと思います。
つづく